止水材 パイルロック®の種類と特徴

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水膨潤性止水材の製品体系

 日本化学塗料株式会社が保有する水膨潤性止水材には、大きく分けて高吸水性ポリマータイプとウレタンタイプがあります。高吸水性ポリマータイプは、主に仮設工事用に使用されるケースが多く、乾燥性に優れたパイルロック®速乾型があります。また、海水中での膨潤率を改良したシート状に加工したケミカシート®は、粘着面を鋼材に貼りつけるだけと非常に作業性に優れています。
 無溶剤型のウレタンタイプは、流し込むだけで施工ができ施工手間が少ないことが特長で仮設・本設を問わず汎用的に使用されていますが、塗膜の耐久性が優れるため特に本設工事用に適しています。また、溶剤を含まないことから、取扱いが容易で周辺環境への影響が少ないことが特長で、さらに、硬化促進剤を併用することで、硬化速度を速め硬い硬化膜を形成することができます。
  一方、施工後の漏水等に対応するため、ゴム状コードに加工した止水コードも提供しており、漏水箇所へ止水コードを押し込み膨潤させることで止水効果を発揮します。

止水材の製品膨潤性止水材の製品体系体系

ウレタンタイプ:パイルロック®NS-v

膨潤機構について

 パイルロック®NS-vは、高親水性ウレタンをベース樹脂としたウレタンタイプの止水材である。その膨潤性は樹脂自体の持つ水との親和力により発現するもので、親水性のウレタン樹脂が水を吸収膨潤し止水効果を発揮する。

膨潤率特性評価方法

 膨潤試験手順は以下の通りである。
  ①止水材の一定量を乾燥させ2mm厚さのシートを作成、2×2cmに切断して試験片を準備する。
  ②試験片の初期重量を測定し、一定条件に調整された水槽内に入れ浸漬させる。
  ③所定の浸漬時間後に試験片を取り出して浸漬後の重量を測定する。
  ④膨潤率(重量)=(浸漬後重量/初期重量)を計算し膨潤率を求める。

膨潤率について

 パイルロック®NS-vの膨潤率特性は、浸漬水温が高くなると膨潤率は低下し低くなると膨潤率が高くなる傾向を示す。高吸水性ポリマータイプのパイルロック®に比べ膨潤率はさほど高くはないが、水質の変化による膨潤性への影響を受けにくく、淡水と塩水による膨潤率の差は高級性ポリマータイプの止水材に比べ非常に少ないという特長がある。

 また、浸漬水のpHの影響を見ると、酸性或からアルカリ或まで膨潤率はほぼフラットであるが、pHが14以上になると急激に低下する。pH1~13の領域で使用可能である。

各種化学物質を含む浸漬水中での膨潤率特性

 パイルロック®NS-vは、パイルロック®と同様に浸漬水に含まれる重金属類、有機溶剤等は膨潤率特性に全く影響を及ぼさない。

高吸水性ポリマータイプ:パイルロック®速乾型

膨潤機構について

 高吸水性ポリマータイプのパイルロック®速乾型、ケミカシート®は、水と接触膨潤し継手の隙間空間をブロックすることで止水効果を発揮する。この現象は組成中に含まれる高吸水性ポリマーが水を吸収し膨潤することにより発現するものである。 止水材に配合されている高吸水性ポリマーは高分子電解質であるため、水と混ざり合おうとし水が高吸水性ポリマーに吸収されゲル状に膨潤する。更に吸収が進むと水に溶解して均一な高分子溶液となってしまう。しかしながら、この高吸水性ポリマーは多価金属イオンと結合することにより、金属塩を架橋点とした3次元架橋網目構造を形成し水不溶性となる性質がある。この特性を生かしパイルロック®速乾型には、水中でイオン化する多価金属塩化合物を微量配合しており、高吸水性ポリマーとの金属塩を形成することで周辺水への溶解・流出を防いでいる。 なお、ケミカシート®は塩水(海水)条件下での膨潤率を向上させたタイプであり、パイルロック®速乾型に比べ塩水(海水)条件下での膨潤率が約2倍である。

膨潤率特性評価方法

 膨潤試験手順は以下の通りである。
  ①止水材の一定量を乾燥させ2mm厚さのシートを作成、2×2cmに切断して試験片を準備する。
  ②試験片の初期重量を測定し、一定条件に調整された水槽内に入れ浸漬させる。
  ③所定の浸漬時間後に試験片を取り出して浸漬後の重量を測定する。
  ④膨潤率(重量)=(浸漬後重量/初期重量)を計算し膨潤率を求める。

膨潤率について

 高吸水性ポリマータイプ止水材の膨潤率を以下に示すが、膨潤率は水温の上昇とともに大きくなり、40~50倍にも達する。一般に淡水中よりも塩水中での膨潤率は小さくなる。吸水性樹脂へ水の吸収のドライビングフォースは浸透圧によるものであり、塩濃度が高い環境下ではこの効果が弱くなることによるものである。ケミカコートRは、塩水中での膨潤率をパイルロックRの約2倍と大幅に改善した止水材である。

各種化学物質を含む浸漬水中での膨潤率特性

 廃棄物処分場等の遮水工に使用される場合、各種の化学物質を含有する水と接触する場合が想定される。以下に、化学物質、有機溶剤等を含む浸漬水中での膨潤率を示すが、淡水の場合と比較して変化は認められず、どのような環境下においても安定した止水効果を発揮するものと考えられる。しかし、有機溶剤100%における試験では、ベース樹脂成分が有機溶剤溶解するため膜が崩壊するので、有機溶剤に直接触れるような環境下では注意が必要である。また、原油に対しても同様に崩壊する。

COD、BOD濃度と膨潤率特性

 湖沼、河川、海域での遮水工においては、汚濁水との接触も考慮する必要がある。COD、BODが高い環境下での膨潤率を測定した。結果から明らかなようにCOD、BOD濃度がパイルロック®、ケミカコート®の膨潤率特性に及ぼす影響は非常に少なく、汚濁環境下においても良好な止水性を維持している。

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